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オーストリア・スキー日記:4日目

ツェルアムゼー、カプルン

  忘れえぬ場所
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カプルン ケーブルカー 火災
ゲデンクシュテッテは左の建物だ。
奥にケーブルカーの線路が見える
カプルン ケーブルカー 火災
ゴンドラ駅からケーブルカーの線路。
あのトンネルの奥で事故があった
 朝起きてみたら、やはり右足のふくらはぎがパンパンだった。スキーはやらない方がいいかなあ。しかし、ここまで来て3日滑ってリタイアなどやりたくない。かといってもっと悪化させてしまったらとんでもない出費だ。保険入っていないし。でもゴールドカードで交通費の一部を出しているから、まるっきりダメということはないだろうが。とはいえ今日の行き先、カプルンは特別な場所だ。あれこれ悩みながらも、時間になると、たいしてためらいもせず、行くことにした。どうしても足がダメだったら、滑らなければいい(どうせ滑るだろうけど)。びっこをひきながらヨチヨチとバス停へ。板をバスに預けてあることがこれほど楽とは思わなかった。とりあえず、今日は天気は曇り気味らしいが、ひどくはないみたいなので予定通りカプルンに行くことにする。
 バスの運行表では本日はツェルアムゼーの日だ。ここはツェル湖を見下ろしながら滑るリゾートスキー場だ。しかしここからタクシーで15分ほどの場所にカプルンというスキー場があり、ここはキッツシュタインホルン氷河の上を滑るという、実に豪快なスキーを楽しむことができる。で、私はオーストリアに来る前にメールで、スノーシャトルのブライアンにツェルアムゼーからカプルンへの行き方などを教わっていたうえ、リフト券が共通だと聞いていたので、ツェルアムゼーに到着したら私だけすぐにタクシーでカプルンに行き、昼過ぎまで滑ったらツェルアムゼーに戻り、ゴンドラ1本分くらいは滑る予定でいたのだ。どうしてこんな落ち着かない、またもランチ抜きを覚悟の強行軍をするのかというと、それはカプルンに特別な思い入れがあるからだ。
 2000年11月11日、ここカプルンのスキー場でケーブルカーがトンネル内火災を起こし、155名の人命が失われた。日本人も10名含まれており、その中には出口沖彦という元デモンストレーター(私がスキーを始めたころに引退した、いわゆる渡部三郎の時代のトップスキーヤー)も愛娘とともに亡くなった。そして私の大学の後輩の女の子も命を落とした。スキーで亡くなるなんてのは、あってはならないことだ。それでも立木に激突なら自分のせいもあろうが、乗っていたケーブルカーが、偶然が重なった事故でトンネル内で亡くなるというのはやりきれない。しかもこのツアー、私も参加しようかなんて物色していたものの1つでもあっただけにぞっとしたものだ(11月の海外ツアーは氷河を利用したレーサーキャンプばかりだったから、実際に参加する可能性はなかったが)。
 現在、カプルンにはその追悼施設があるという。ぜひ、お線香をあげに行かなくては。そういうわけで、わざわざ日本から線香を持って行ってみることにした。

◆ザルツブルク〜インスブルック周辺
(政府観光局の地図を加工)
ツェルアムゼー 地図
 ツェルアムゼーはツェル湖のほとりの保養地で、夏はスポーツも盛んなところだ。ここのスキー場は森林の中、湖を見下ろしながら滑ることができる極楽スキー場だ。それに対して、カプルンはキッツシュタインホルンの山頂近くから広がる広大な氷河をメインバーンとした、森林限界を超えた3000m級のゲレンデで、スキー場全体がツェルアムゼースキー場の最高地点よりも高い位置にある。男性的な豪快さと荒々しさのカプルンに対して、優美で繊細なツェルアムゼーのスキー場は実に好対照だ。
◆カプルンのゲレンデマップ
公式サイトの地図を加工)
カプルン 地図
カプルン ケーブルカー 火災
手前の壁の部分、左側にゲデンクシュテッテの
文字が見える
カプルン ケーブルカー 火災
内部は窓のカラーのグラスパネルを通して。
実際にはもっと暗くて、厳粛な雰囲気だ
カプルン
最初のゴンドラを降りて、このクワッド
でアルピンセンターへ
カプルン
ん?なんだあれは?
キッツシュタインホルン
突然、氷河の向こうにキッツシュタインホルンと
展望台が姿を現した
 さてツェルアムゼーに到着し、ゴンドラ駅の前からブライアンにタクシーを確保してもらい、15分、片道25EUR(3,125円)でカプルンのゴンドラ駅に到着した。ちなみにカプルンの町から小さなスキー場に向かってゴンドラが出ているが、これは別のロコスキー場なので、タクシーの運ちゃんには「キッツシュタインホルン」と念を押そう。
 到着してみたところ、ツェルアムゼーほどのにぎわいではないが、ゴンドラ2基の駅があり、あの火災事故を起こしたケーブルカーの線路がまっすぐにトンネルに向かって延びていた。この事故の追悼施設、ゲデンクシュテッテ(記憶すべき場所、忘れられない場所)は駐車場の途中にある。ゴンドラ駅に板を置いてカギをかけ、先に施設に向かった。
 コンクリートの打ちっぱなしの倉庫みたいな建物だ。扉はカギがかかっておらず、中に入ることができる。入るとすぐに「2000年11月11日のトンネル火災犠牲者155人の冥福を祈って」と6カ国語で書かれたレリーフがあり、その背後にはカラーのグラスパネルで独特の雰囲気を醸し出した空間が広がっていた。このあたりはスーパーエッセイで詳細に述べるので、省略することにする。
 施設を出てみると、空はすっかり青く晴れ渡っていた。おお、すばらしい。ゴンドラに乗って、スキー場に向かうことにした。下から見える斜面を乗り越えると、いきなりそこには真っ白の白銀の世界が待っていた。びっくりだ。そして氷河下部の駅からはクワッドに乗り換えてアルピンセンターへ向かう。ここまで来ると一面の銀世界だ。ただし、最高地点のあたりや山頂、そしてその後方はガスが強い。本当はグロースグロックナーというオーストリア最高峰が見えるはずなのだが、ちょっとだめだろうなあ。なにはともあれ、亡くなったスキーヤーたちが目指していた氷河のスキー、追悼の意味も込めて滑らねば。というわけで、スキー場の地図の右側から最高地点に向かった。
 ここはとにかく広大な氷河を見ながら登っていく。途中、ボルボの車を展示したかまくらを見た。まるでスウェーデンのキルナ近く、ユッカスヤルビで見たアイスホテルそっくりだ。中にはトナカイの毛皮を広げたソファや氷でできたバー、カウンターまであった。ボルボはスウェーデンの車だから、スウェーデンの観光名所でもあるアイスホテルを利用しているのだろうか。パパッと見学して先を急ぐ。そして氷河の最上部の尾根、右側斜面から最高地点に向けた短いケーブルカーで登ろうとしたのだが、ちょっと時間を食いそうなのと、氷河の広がる斜面の裏手側が強くガスっていて、遠くの景色、特にグロースグロックナーが見えそうにもないので、意味があるのかなと思えてきた。ううむ、時間が無いので、こういうときは展望台はあきらめて、氷河をひととおり滑ることに専念したほうがよさそうだ。ガスってなんだかよくわからないと思ったら、いきなりパア〜ッと晴れたりして、おおっ、こんな所だったかと驚くこともあるが、滑る分には何の問題もない天気だったと思う。そして1時40分、氷河の最下部でタクシーを呼びだし、ゴンドラで下山したら、ほどなくタクシーが来てくれた。2時ちょっとすぎにはツェルアムゼーのSchuttdorfのゴンドラ口に到着した。 
 ◆ツェルアムゼーのゲレンデマップ
公式サイトの地図を加工)
 ツェルアムゼー 地図
ツェルアムゼー
宣伝用のぬいぐるみだ!
ツェルアムゼー
カプルンに比べて木が多い
ツェルアムゼー
ツェル湖を見下ろす
スノーシャトル
 ブライアン(左)、楽しかったです!
右は運転手でした
 
 とにかく、最高地点に向かう。カプルン方面は雲が多いのに対し、こちらはいい天気だ。ゴンドラには巨大なゴリラのぬいぐるみを抱えた人も乗車してきた。なんでも、これを抱きかかえて滑るらしい。近くの飲み屋の宣伝だとか。いいねえこういう工夫するの、好きだな。でも、事故起こさないでね。
 ゴンドラを乗り継ぎ、2時40分過ぎに最高地点へ。いい天気だが、カプルン方面は雲が多く、キッツシュタインホルンの山頂は隠れていた。ところでこのスキー場、図にもあるとおり、左右両端の尾根は八方尾根みたいに四股を広げたような斜面だが、中央部分はえぐれたような急斜面になっている。これは視覚的に湖に向かって飛びこむように滑ることができるということだ。湖まで、視界を遮るものがないからだ。そして山の裏手には穴場的な斜面が広がっていて、ここは雪質も良く、それなりに滑る人が好みそうなバーンだ。木が多く、コースも分かりやすい。家族連れも多いのでちょっと優雅だ。ちなみにオーストリアにはたまにあったが、クワッドリフトの座席が暖房になっているのもあり、思いがけずニッコリしてしまうこともあったが、なかなかいいものだ。
 さて、とりあえず最高地点と最上部のリフト1本まで滑ったものの、右半分の尾根へ降りると、バスが待つツェルアムゼーの町に戻れなくなる気がしたし、足も心配なので、裏手から山頂に戻り、あとはバス停に向かって滑り下りた。3時48分にはバスに到着し、ザルツブルクでのスキーを終えた。それにしても普通の靴ではまともに歩けないのに、ブーツをはくと滑ることができる。とりあえず滑ることができるだけでも感謝だ。
 ところで、ブライアンには本当に世話になった。話は面白いし、親切で、本当にいろいろなことを知っている。彼がいてくれたおかげで、効率よく楽しむことができた。もしあなたがザルツブルクにスキーにいくことがあったとしても、このサイトの情報と、ブライアンのスノーシャトルがあれば、旅行会社は使わなくても何の心配もいらないだろう。私のような2都市の欲張りツアーは特殊だが、世界遺産都市でもあるザルツブルク1都市のスキーは観光も楽しめるので、手頃でお勧めだ。
 この日の夜は、アップルツアーで来たというおじさんと一緒にmy indigoという寿司レストランに行った。ザルツブルクへのスキーは数回というオーストリア好きのおじさんだ(概要のページで話したが、このツアー、飛行機+ホテル+送迎だけなのに、ものすごい料金で、しかも一人部屋追加料金が信じられない)おじさんには冷湿布をたくさん分けてもらい、本当に助かった。帰国したら、お礼しなくちゃ。
 さて、明日はザルツブルク観光してから、インスブルックへ移動する日だ。楽しみ、楽しみ。
 ※このレポートではスノーシャトルは曜日ごとに色々なスキー場に行っていますが、
 2015年11月現在、フラッハウのみの運行となっています。行かれる方は必ずご確認ください。

ザルツブルクのシャトルバス(ザルツブルクスノーシャトル)日本語
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ゲデンクシュテッテ カプルン ケーブルカー 火災
ゲデンクシュテッテ内部 外国人は故人の生前の写真をよく貼るが、
日本人で貼っている人はいなかったなあ。
カプルン カプルン
あの上に氷河が広がる アルピンセンターのちょっと下あたり。
パウダーは早いもの勝ちだ
カプルン カプルン
八幡平や山田牧場でも見たなあ・・・ これがアイスホテルそっくりの
車の展示場だ
カプルン カプルン
ソファらしい アイスホテルのまねじゃないか!
カプルン ボルボ
トナカイの毛皮もあり、
アイスホテルそのものだ
ボルボはスウェーデンの車。
アイスホテルでイメージの相乗効果か
カプルン 雪印
遠くの景色は雲がずっとかかっていた きれいな結晶の雪がいっぱいだ
カプルン カプルン
なんでこんなところに火力発電所が!!?。
これ、ロープウェイの支柱でした
広大なバーンだ
カプルン カプルン
モロに立体交差するリフトだ 今、交差します!
ツェルアムゼー ツェルアムゼー
■ここからツェルアムゼー あれ?キルナでみた
オーロラ観測小屋かな?
ツェルアムゼー ツェルアムゼー
カプルン方面は雲がかかっていた ツェル湖が黒ずんでいた
ツェルアムゼー ツェルアムゼー
な、なんだこれは 美しいコブ斜面だと思いませんか
ツェルアムゼー ツェルアムゼー
色とりどりの旗だ 古いゴンドラがあったぞ
ツェルアムゼー ツェルアムゼー
何か困っておるのかね?
後ろの2人は気にしないで
山頂付近に巨大かまくらがありました
ツェルアムゼー ツェルアムゼー
山頂の裏手には教会が!  湖と山が同じ模様じゃないか!
スシ トマト ラーメン
ザルツブルクに戻って。
今日はスシだ
ジャージャー麺風のトマトラーメン。
味は・・・期待しないで
和食レストラン
これがそのレストラン my indigo だ
【ギャラリー】 
カプルン
◆LANGWIED地点 
  最初のゴンドラを降りて、今度はクワッドでアルピンセンターへ。本格的にスキー場が始まるのはそこからだ
キッツシュタインホルン
◆キッツシュタインホルン
  ときどき晴れ渡り、山頂すぐ下の展望台が見えることがあった
カプルン
◆氷河最上部
 氷河の上はなんでもOKの広々バーンだ
カプルン
◆アルピンセンター下の下山コース
 圧雪された急斜面だ。ところであのナイフのような尾根の向こうはガケ?
ツェルアムゼー
 ◆ツェル湖に向かって
 カプルンに比べて優雅さのあるコースだ
ツェルアムゼー
◆ツェル湖(その2)
 山肌も湖も町なみも、白黒のまだらじゃないか!
 
TIP
 ザルツブルクにスキーに行くなら、とにかくスノーシャトルだ!。
http://www.snowshuttle.net/jp.htm (スノーシャトル公式サイト(日本語))

カプルンのケーブルカー火災についてはエッセイのコーナーで特別にページを立てましたので
ご覧ください!。「オーストリア ケーブルカー火災



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オーストリアの概要   
スキー日記:1日目  キッツビュール (ザルツブルク)
スキー日記:2日目  シュラドミング (ザルツブルク)
スキー日記:3日目  バドガスタイン (ザルツブルク)
btn-arrow スキー日記:4日目  ツェルアムゼー&カプルン (ザルツブルク)
スキー日記:5日目  ザルツブルク観光
スキー日記:6日目  シュトゥーバイ氷河 (インスブルック)
スキー日記:7日目  アクサマー・リーツム&ムッテラー・アルム (インスブルック)
スキー日記:8日目  パッチャーコーフェル インスブルック観光 (インスブルック)
スキー日記:9日目  サン・アントン (アールベルク)
スキー日記:10日目  ガルミッシュ・パルテンキルヘン (ドイツ:バイエルン)
スキー日記:11日目  レッヒ (アールベルク)
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