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■アルパインロッジ本館の全景
(焼失して、今は無い) |
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■送迎バス。スクールバスを改造したもの
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■ウィスラーのゴンドラステーション
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■ウィスラーボウル。右下からピークチェアに
乗って、中央のピークへ。 |
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■これがピークチェアだ |
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日付には2つの穴がある。1月の2日
までが期限という意味で、使用した日は
黒く塗られている(25日はヘリスキーで
使用しなかった)。 |
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1:ビレッジ 2:レストハウス「ピカ」
3:ピーク |
いよいよ、今日からスキーだ!。といいたいところだが、どうも調子が悪い。時差ボケもあるが、宿泊したアルパインロッジの部屋が悪かった。とにかくうるさい。ロッジの2階の中央に大きな部屋があり、真中に大きなテーブルと暖炉があって食事や談笑ができるのだが、3階と吹き抜けになっていて、3階の部屋に2階の騒ぎが反響して入ってくるのだ。おまけに夜中に看護婦のキレたねえちゃんが乱入して来るし(おめー、よく投薬を間違えてんじゃねーのか?)、寝たのか寝れなかったのかよく分からない。部屋の名はペールフェースという。pale face;青白い顔という意味で、インディアンが白人を始めて見た時の表現らしいが、寝不足でこっちがペールフェースになってしまった。
朝食は買い込んだパンにあれこれ塗って、コーヒーを流し込む。牛乳を買っていたつもりが、間違えて料理用のバターミルクみたいなやつで、一口飲んで全部吹き出して、パックごと捨ててしまった。バナナをほおばり、リュックにはお菓子や水を入れた。
そうそう、ここで少し装備の話をしよう。私は写真をたくさんとる人なので、国内でもリュックを持っていく。一眼レフに交換レンズ(広角20mm〜のズーム)、時には望遠ズーム(〜300mm)まで持参し、予備フィルムも多目に持ち歩く。リュックは中が上下2室になっていて、ぶち抜くこともできる。
リュックのデメリットは背中でゆれて邪魔になるので、必ずウェストベルトを締める。また、転倒したときにレンズが背骨にあたり、車椅子になった人もいるので、背には分厚いウレタンのスポンジを装着している。このへんは海外スキーの番外編、「海外スキーのアドバイス」でさらに詳しく話そう。
お菓子を入れるために、小型の丸みのあるプラスチックケースもある。お茶の時間は甘いお菓子があると充実するものだ。キットカットみたいなチョコレートは粉々に粉砕されてしまうので、プラケースはありがたい。また、昼食に入る前にスキー板にハンディワックス(液体)を塗っておき、食後、滑る前に磨きを入れることにしている。私はTOKOの黄色いハンディタイプで磨くフェルトが付いているのがお気に入りだ。
ウィスラーでは昼食でリンゴを食べるクセがついたため、以降、スキー場では帽子等にリンゴをくるんで、昼食のデザートにするようになった。自分ではこれがカナディアンスタイルだと思い込んでいる。
さて、おんぼろの送迎バスに揺られてウィスラーへ。少しずつスキー場が近づいてくると、ワクワクしてきた。
ここで、リフト券について説明しよう。リフト券は事前でも当日でも買うことができる。クレジットカードもOKだ。私は10日間滑ると言ったら、券はDM10/12とか書いてあった(右の写真見て)。DMはデュアルマウンテンで、ウィスラーとブラッコムの両方で使用可という意味。日付は使用開始から12日以内の、任意の10日分使用できるということだ。これは10日間もぶっ続けで滑らずに休養日を入れたり、吹雪いた時のことや、ヘリスキーをする日を勘案して、連続して使用する必要は無いようにとのことだそうだ。途中、雪が降った翌日に晴れそうだったら、ヘリを入れるつもりだったので、滑走日は11日間だが券は10日券を買った。実物の下のGSTは税金で、価格は470.8カナダドルだ。その場でクレジットカードでも買える。下の部分にはバーコードによるタグがあり、もし紛失しても再発行してもらえるので、別に保管しておく。
ただし21世紀になってから、このマジックペンによるチェックは無くなり、しかもバンクーバーのコンビニで購入した方が安くなるという。ウィスラーはサービスを年々向上させていくスキー場だ。最新の情報をチェックしてみて。
ゴンドラゲートへ。これはアメリカやカナダの共通点だが、リフト券を見せるのは、一番下の改札だけだ。朝イチにリフト券にある本日の日付の部分に印をつけて、期限までに10日分使用したら終わりというものだ。リフトの乗車時のチェックはここだけで、上では何回乗ろうが乗るまいが、関係ない。いわば「入場券」のようなものだ。ガツガツ滑って「リフト券のもとを取る」という日本人的発想は無い。リゾートとはこうありたいものだ。
やや縦長の10人乗りゴンドラに乗る。座るスペースはほとんど無い。ケツが半分くらいしか乗らないのだ。ブーツを履いているので、よっかかっているという感じだ。とにかく、速くて長い。中間駅があって、途中でドアが開いたので降りようとしたら先輩に止められた。ゴンドラの中間駅なんて初めて見たので驚いた(日本ではその後、白馬栂池やARAIなどで見たが)。
ゴーゴーいいながら、すごく山奥に入るが、昇り降りせずに、ひたすらどんどん上がっていく。いかに大きな山かを実感できる。この長いゴンドラに10分は乗っただろうか。降りたところは別世界だった。森林限界を超えていて、木が生えていない。日本ならニセコやARAIなどがそうだが、これまた当時の私には初めてだった。ゴンドラ駅の外にはカナダの国旗が並んでいて、ウィスラーの山頂めがけてリフトがかかっているのが見える。これこそ「こわい」「寒い」「のろい」の3拍子揃った、ピークチェアである。まだ動いていないようだ。話によると、雪崩の危険があるときは雪崩のよく発生する場所まで張ったワイヤーを使用して爆弾を破裂させ、人工的に雪崩を起こしてから動かすらしい(なお、このピークチェアは2000年ごろのシーズンに無くなり、高速クワッドに架け替えられたそうだ。少しさみしい気もする)。
申し遅れたが、リフトは「チェア」と呼ばれ、リフトにはオレンジ、レッド、グリーンなどの名前がついているものが多く、「グリーンチェア」といえば本当に緑色のリフトになっているので、外国人でも分かりやすいし、遠くからでも認識できる。日本によくある「ロマンスリフト」じゃ何だかわからん。
私は今日は先輩と行動することにした。まずエゴ・ボウルという初心者コース、といっても中級コースを滑る。実に快適だ。向かい側のブラッコム山、セブンスヘブンがきれいだ。このエゴ・ボウルのいいところは、ちょうどグリーンチェアというクワッドの乗り口に行き着くことだ。しかも距離も3km以上あるだろうか。圧雪の状態もすごくいい。グリーンチェア(現在、名称が変わったらしい)に乗ると先ほどのゴンドラ駅に着くので、足慣らしやピークチェアの稼動待ちにぴったりだ。
また、朝イチの時間帯では、このコースからビレッジを遠く見下ろすと、雲にすっぽり覆われていることが多い。この雲海の上を滑っていると空を飛んでいるような錯覚に陥るのが面白い。
ウィスラーを楽しむためには、無理に上級者になってから来る必要は無いが、せめて足元を見ないで、遠くを見ながら滑ることができれば、相応に楽しめるのではないだろうか。
さて、グリーンチェアで上に戻ったころ、集合時刻になった。ロッヂでは、客にガイドをしてくれる。ジェフとキャムという兄弟で、二人とも日本に来たことがあり、日本語は相当うまい。弟のキャムは奥さんが日本人だ。この三人に、たまにアルバイト(従業員はほとんど日本人で、コックを含めて男女5人くらいいる)が数人参加することもあるが、基本的に10〜15人くらいの客が3班に分かれる。カメチームと、ウサギチームと、戸塚チームである。戸塚チームとは兄のジェフが日本に来たとき、ちょうど戸塚ヨットスクールの事件があって驚き、そこから命名したという。なんでもアリのチームらしいが、先輩に誘われてここに入る(まだ2級も持っとらんのに)。
まずはピークチェアでピーク(山頂)へ。高くて怖いリフトだ。目の前には信じられない断崖コースがあって、そこを奇声を発しながら滑り降りてくるのがたまにいる。実に英雄的に見えてしまうから不思議だ。フカフカの雪だが、たまに岩の頭がヒョッコリ出ていて、油断はならない。
ピークに到着。いきなり、遠くに尖がった山が見える。何も聞いていなかったのでびっくりした。これがウィスラー名物のブラックタスクだ。溶岩が飛び出して固まってできたらしい。ここで記念写真大会となる。ここには写真屋がいて、カメラが無くてもこの人に撮ってもらい、夕方、ビレッジのカメラ屋にくれば写真を受け取れるというシステムだ(私は一眼レフを持っていたので世話にならなかったが)。
そこから細い山道のような下山道があり、初心者コースとなっていて、絶叫コースを避けたい人はそこを滑ることになるのだが、景色がすばらしいので失望することはないだろう。丸い緑色のサインが一定間隔ごとに立てられていて、吹雪の時もこれを目印にすれば下山できることになっている。山道といっても、全く木が生えていないところに細い幅で圧雪しているのでそう見えるだけで、見た目には広いところを滑っているようだ。
ちなみに、ウィスラーの中腹(ゴンドラの中間駅がある)には、広い緩斜面がある。ここがスクールの初心者レッスン場になっていて、大勢の日本人のおじさん、おばさんがいた。農協の団体旅行かと思ったら、叫び声を聞いて驚く。なんと、中国人である。
話によると、香港の返還が近づき、多くの香港人が国外脱出をしたが、ここバンクーバーはその最大の移民の移住先となった。そのため世界屈指のチャイナタウンが形成されたのだ。彼らの最大のステータスは「スキー」であった。雪を見たことが無い香港人にとって、スキーをすることはカナダに対する忠誠心の表現、あるいは物好きも加わった気晴らしに違いない。えらい人気らしく、スクールにとってはいいお客さんであり、香港の中国返還をケ小平以上に喜んだのは彼らかもしれない。
話をピークの山道に戻そう。ウィスラーピークからの長い長いダウンヒルコース(山道)は、別名「チャイニーズ・ダウンヒル」という(地図の3の裏側にあたり、3と2の間くらいに抜ける)。ウィスラーでは、チャイニーズというだけで「スキーが下手」という意味があるらしい。彼らがてんとう虫のようにとにかく一番高い所に登ってしまうと、周囲のガケなんぞ降りることができない。そこで大回りをしながらやさしい山道をトロトロすべり降りるのである。そのためそのコースは中国人が大勢いるので、この名がついたそうだ。
とはいえ、なかなかマーケティングができているではないか。ブラックタスクを望むピークのすばらしい眺望を初心者も楽しめるようにしているのである。
その他あちこち滑ったが、初日で時差ボケもあるので、このくらいにしよう。早めに宿に戻り、送迎バスでビレッジを散策し先輩と夕食をとる。食事は中華がなかなかよく、口にあう。夜、ロッヂに戻ってジャグジーに入り、10時ころに寝た。ぐっすり眠れた。