バレブランシュの氷河スキー(Vallée Blanche) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
シャモニよりロープウェイを2本乗り継ぎ、一気に富士山より高いエギュイーユ・ドゥ・ミディに登る。 ここから氷河に入り、巨大セラックを眼前にするレストラン付近で長い昼食。午後は下部のバレブランシュをベルト峰、ドリュー峰を見ながら滑る。 モンタンベールより登山鉄道でシャモニへ戻った。 |
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バレブランシュの鳥瞰図 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
日本人3人では商売にならないのか、フランス人ガイド1人に、他の客(当日、車で到着したようなアベックなど、フランス人を含めて10人くらい)と一緒に滑ることになった。 さて、エギュイーユ・デュ・ミディへのロープウェイの駅へ到着。すると、いるわいるわ、えらい数のスキー客が。みんな考えることは同じだ。ガイドが全員の分の整理券を受け取り、駅前の喫茶店で時間をつぶすことになった。ここでザイル用の器具(パラシュートで飛び降りる人が使うような登山道具)を体に巻きつけたのだが、使用している人は半分もいなかった。 時間になり、ロープウェイに乗る。すごい斜度で登り、中間駅で降り、次のロープウェイに乗る。右手には、あのボソン氷河がクレバスをぼこぼこに見せながら、延々とつながっているのが見える。斜度がきついため、ヨーロッパ最高速で動くのでこうなるのだというが、氷河というよりも氷の滝のようだ。 しばらくして、エギュイーユ・デュ・ミディの駅に到着。全員をザイルで結ぶ。展望台には全く立ち寄らず、すぐに出発することになった。シャモニ・スキーの観光パンフレットには、この展望台からスキー板を履ける場所までロープを伝って降りていくところが有名だ。写真を見ると、何だか登っているように思えたが、実は尾根づたいに降りていくのであった。 ここで、事態は急変する。苦しい。息が切れる。気分が悪い。なにしろ、富士山より高い場所にいきなり上がってきたのだ。板とストックを左手に、右手でロープをつかみ、ゆっくり降りていくのだが、ものすごく疲れる。クラクラするし吐き気すら覚えるのは情けないが、それでも首から下げていたカメラで周辺を撮影する。尾根の左側は、はるか眼下にシャモニの町が見おろせ、対岸には昨日滑ったブレバンが見える。下の町からミディを見上げた高さよりも、ミディから見下ろした町の低さの方が、はるかに高低差を感じられるから不思議だ。一方の右側は別世界だ。広大な氷河が待っているではないか。ゼーゼー言いながら、何とか板を履ける場所まで降りた。ここでザイルが外され、全員板を履く。呼吸を整えやっと落ち着く。 さて、コースはバレブランシュのやや急斜面ではなく、岩山1つ隔てた隣のジェアン氷河を経由する、緩斜面コースをとる。ちんたら行くにはいいだろう。ガイドを先頭に、一列になって滑る。とにかく広い。岩原や栂池のバーンに感動していた自分が可愛くなる。モンブラン初登頂のスポンサーだった博物学者のソーシュールは、このジェアン氷河に来て「心が高まり、空想が広がり、この荘厳な静寂の中に自然の声を聞いたような気がする」と書きとめたそうだ。そういう場所に、日本から一昨日来たばかりのスキーヤーが、テレテレ滑っていられるのだから、ありがたい限りだ。時々止まってはガイドが何かしゃべっているが、分からない。写真スポットに来ると立ち止まり、みんなカメラを取り出す。のんびりしているが、立っているだけでも価値がある時間と空間だ。ゆっくり行こう。空高く、何か変なものが見える。イタリア行きのロープウェイだという。3800mの高度で氷河を横断し、国境を越えるというから驚く。八方と岩岳をロープウェイで結んでも及ばないだろう。発想自体がすごい。 上部は雪が十分にあり、クレバスの危険は全くないようだ。のんびり滑る。正面には、とんがり帽子をかぶった山が見える。これがダン・ドゥ・ジェアン(Dent du Géant: 4013m)であり、「悪魔が棲む山」と言われたそうだが、とても絵になる山で、一目見て気に入ってしまった。 途中、急斜面の部分ではクレバスがぼろぼろになって流れており、その眼前にあるレストランで昼食となった。中は混雑して入れないので、持参してきたサンドイッチを雪の上で食べる。昼食は1時間くらいだろうか。日差しがよく、風が無いので、それほど寒さは感じない。雪の上で上半身を脱いで日光浴している人もいる。 下はさらに緩斜面になる。ストックで漕がなくてもすむ程度の斜面だが、目の前にどどどーんと岩山がそびえる。これがドリュー峰だ。もうすぐ終点という所で、クレバスを滑るという。といっても、このへんは浅くて、危険ではないのだが、細くなったクレバスの裂け目の間を斜面に対して横切るように滑る。写真の通り、身の危険を感じるほどのものではない。 この辺りはメール・ド・グラス(Mer de Glace:氷海)と呼ばれる。それは、バレブランシュ、ジェアン氷河の他に、昼食場所より下のタキュル氷河、そして遠くのレショー氷河、タレフル氷河などの氷河が合流しているからだ。河が合流して海になるわけだが、標高が低いため氷の量が融けて少なく、その幅も狭いことから、海のイメージとは程遠い。でも、氷海と言うんだな。 登山鉄道の駅に到着。ここで思わぬ伏兵に遭う。このツアーの最大の試練、階段である。なにしろ、登山鉄道の駅、モンタンヴェールまでゴンドラで登るのだが、そのゴンドラの駅までが、十階建てのビルを登るような階段があるのだ。てっきり今日は終わったつもりで、日本でいう「温泉気分」になっていたので参った。とにかく、ストックを杖にし、休みまくりながら階段を上がる。鉄道の駅で30分以上休憩。帰りの電車では寝てしまった。 町に戻り、今日は山岳博物館に行ってみた。しかし展示物は書類とか文字が多く、フランス語が分からない客にはさっぱり分からない。博物館なら、ツェルマットの山岳博物館(マッターホルン博物館)の方がビジュアル中心でいいだろう。 |
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町から針峰群を見上げる | 白く飛んだが、モンブランを見る。 朝は町が暗く、山がまぶしい |
大変な行列だ | ちょっと待つか。 それにしても、あの漢字はフランス人が書いたんだろうなあ |
資材を運ぶロープウェイだ | さて、行くぞ |
2本目のロープウェイはほぼ90度の角度で登る部分がある | 次のロープウェイを待つ |
シャモニの谷を見下ろす | ああやって、いったん雪原に降りる |
おーい、ゆっくり行こうぜ | ずいぶん急な斜面を降りていく |
だいぶ降りてきたぞ | まだあんなにある! |
雪原から振り返って | やっと滑れるぞ |
いきなり急斜面で始まる | すごい巨岩だ |
エギュイーユ・ドゥ・ミディを振り返って | バレブランシュ氷河からジェアン氷河へ。 正面がダンドゥ・ジェアンだ |
矢印のところにアイスクライマーがいるの分かります? | 2人で登っているよ! |
平坦な氷河を滑る | なんだかコブ斜面になってきたぞ |
いいか、これからやばい所を滑るぞ | まあ、長めのコブ斜面ってとこかな |
セラックを背に。生まれて初めて ハーネスを装着したが、いらなかったような。 |
セラック下の小屋でランチだ。 大混雑なので、弁当持参が正解。 |
小屋から見たセラック。 いかに巨大かは、右の写真見て → |
セラック下部を望遠で。 人があんなに小さいのだ! |
氷河の最後の方だ | ドリュー峰が威圧してくるようだ |
氷河を振り返って | クレバスの浅くなったところだ |
なかなか体験できないコースだ | 鉄道駅への階段を登り終わり、氷河を振り返る。 正面奥の断崖がグランドジョラスだ |
これが鉄道 | むかしの機関車らしい |
今日は日傘です | アルペン博物館。書類みたいなのばかり |
博物館の、数少ない、それとわかる展示物 | ホテルの食堂だ |
ジェアン氷河上部 | |
ダン・ドゥ・ジェアンは何か邪悪な雰囲気だ。 左側の空中の点は、なんとフランスとイタリアを結ぶロープウェイだ |
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地球はこんな惑星だったのだ | |
エギュイーユ・ドゥ・ミディ (絵葉書) | |
バレブランシュ氷河 (絵葉書) |