バンフ・スキー日記(7日目): グラウスマウンテン |
すべてを許す |
|
|
バンフでのスキーは昨日のパノラマで終わり、今日はバンクーバーへの移動である。ここでツアーには2つのコースに分かれる。早朝にバンフを出てカルガリーから飛行機でバンクーバーに入るまではいっしょだが、そのまま成田行きの国際線に乗り継いで帰国する人と、バンクーバーで半日観光をかませてから翌日の便で帰国する人の2つのグループとなる。私は後者のバンクーバー観光を選んだ。
なぜバンクーバー観光を入れたかというと、私はどうしてもバンクーバー郊外(車で15分)のグラウスマウンテンに行ってみたかったからだ。ここはバンクーバーの夜景を見ながら滑ることができることで知られ、私のかつての上司(別会社でカナダ地区の社長をやっていたことがある)がバンクーバー駐在中、シーズン券を買ったことがあるという所でもあるのだ。
夜景を見ながら滑るのは札幌藻岩山で体験したが、なかなかいいものだった。こうなったら、ぜひ行ってみなければ。
しかし、シーズンが終わってしまう。クローズは4月中旬とかいっている。直前にメールを数回出したが、返事はいつも「その時の状況を見てクローズ日を決める」「来るとき聞いてくれ」といった返事だ。雪の状態はいつもWEBでチェックできるが、滑ることができるバーンは限定されてきた。ううむ、どうしよう。結局、バンクーバー入りした日の昼、空港から電話をかけて、営業していなければあきらめてバンクーバー観光にするという賭けに出ることにした。しかしバンクーバーの市内観光はウィスラーに行った時に半日ほど行っているので、どちらかといえば不本意な時間の使い方になる。 |
GrouseMountain MAP |
|
黄色いバツマークは、運行していなかったリフト
|
|
|
|
バンフからカルガリーへ
|
|
|
|
カルガリー五輪で使用
されたジャンプ台だ |
|
|
|
■観光名所のガスタウン
|
|
|
|
■ガスタウンの名の由来と
なったギャシー・ジャックの像 |
|
|
|
これがロープウェイだ
|
|
|
|
みんな好きだねえ
|
|
|
|
ロープウェイ駅。
何も見えんぞ |
|
|
|
巨大な彫刻が
いっぱい |
|
|
|
おおっ、バンクーバー
が見えるぞ |
|
|
|
うれしや、晴れだした
|
|
|
|
バンクーバーに
向かって! |
|
|
|
ナイターまで
もってくれ |
バンフの出発は夜も明けない5時ごろだった。インズ・オブ・バンフの客は私だけで、あとはバンフスプリングスでピックアップして10人乗りの車はいっぱいになった。
カルガリーに向かう途中で朝となった。JTBの送迎担当者は車中、運転しながら周囲のガイドをしつづけたが、私の頭の中はグラウスマウンテンのことでいっぱいだった。早朝のテレビのお天気チャンネル(24時間、カナダの天気予報だけをぶっ通しで放送しているが、テレビというメディアの信頼性を危うくするような内容となっている)では、今日のバンクーバーは雨で、さらに悪くなるだろうとのことだった。バンフは山の中なので外れても仕方ないという見方もあるが、バンクーバーは海に面した都市であり、天気予報は当たる可能性が高そうだ。いや、ひょっとしたらグラウスマウンテンは昨日で閉鎖しているかもしれないのだ。
飛行機でロッキーを越えてバンクーバーに入る。雨は降っていないものの空はどんよりしていて、山には雲がかかっていた。空港でグラウスマウンテンに電話を入れると、今日は営業しているとのことだった。おお、すばらしい。しかし、曇っていて景色が見えなければ意味がないのだ。
成田帰国組や他の都市に行く人とは別れて、観光組は市の中心部にあるJTBオフィスに案内される。ここで少し説明を受け、ホテルの位置を教えてもらうと近くのお土産屋に連れて行かれ、そこで解散となる。私はエンパイヤー・ランドマークホテルに直行し、スキーの用意をした。ホテルの窓からはバンクーバーを囲む山々が見える。山の上部は完全に雲に覆われ、天気は今にも降り出しそうだ。私はすぐにスキーに出動できるようにウェアや道具をホテルの部屋の床に並べておき、とりあえず市内観光に出て、ナイターに賭けることにした。ホテルを出たところで雨が降り出した。一応傘は持っていたが、ザックを背負った肩が重くなった。市の中央部のコーヒーハウスで昼食をとると、海岸へ向かう。パンパシフィックホテルのところで曲がり、数年前にも立ち寄ったガスタウン(数少ない、史跡と呼べる場所)に行った。天気は降ったり止んだりだ。そこから前回は行かなかったチャイナタウンへ行き、中山公園を見てから市の中心部へ向かう。ここで雨が強く降り出し、ビルの中の喫茶店で休憩した。
そろそろグラウスマウンテンに行くか否かを決断しなければならない。念のために電話をかけたら、営業はしているが視界はゼロに近いという。なんということだ。行っても全く意味がない。傘をさして海岸の近くを歩く。遠くは太陽がどこにあるのか分からないような、どんよりした空が広がっていた。「やめようか」そう思ってパシフィックセンターからシアーズがあるロブソンスクエアに向かう。ここで雨が止んだが、全体的に天気は下り坂のはずだ。シアーズデパートを見て回り、店の外に出たころは、わずかに明るさが見えた。「ひょっとしたら、晴れるかもしれない」そう考えて、ホテルに向かった。とりあえず買物袋を部屋に戻し、スキーに行くか観光を続けるかは部屋で判断しよう。ホテルの部屋からベランダに出ると(50階くらいの高層ホテルだが、ベランダに出ることができる)、遠くの山にはうっすらと雲がかかっているが、ひょっとしたら切れ間が出るかもしれない。10分以上山を見つめて、「よし、行こう」とつぶやいた。
ウェアを着て、板を袋に入れたままかついで、ブーツの入った袋を下げてホテルの玄関に出た。小雨が降り続いていた。道路に出ると、日本人の旅行者(なぜか女の子が多い)によく出くわす。「なあに、あの人、日本人かしら」「やだ、雨が降っているのにスキーに行こうとしているわ」「バカじゃないの」「サイテー」そうは言っていないが、私にはそう聞こえる。笑いたきゃあ笑え。タクシーをひろってグラウスマウンテンに向かう。タクシーはワイパーをせわしなく動かしながらライオンズゲート橋を渡った。姉妹都市・横浜市から贈られたという八重桜が道々に咲き始め、国際都市バンクーバーは春が色づきはじめていた。
15分ほどでグラウスマウンテンに到着した。タクシーは1分につき1ドルが目安と言われているが、ほぼそのとおりだ。チップを入れてちょうど20ドルほどになる。降りた場所はベースの事務所なのだが、人がいなくて閑散としていた。山には厚いガスがかかっており、下りのロープウェイからは数人のボーダーが降りてきた。おいおい、帰っちゃうのかよ。心細いじゃないの。チケット売り場では「リフトは動かしているけど、視界はほとんどありませんよ」と言われた。ここまで来て「はい、そうですか」と言って引き返せるだろうか。だめならだめで、次回の楽しみにすればいい。毒を食らわば皿までだ(※毒を食べたら、皿の底が見えるまで全部平らげなさい、という意味だ。皿までバリバリ食べなさいという意味ではない)。今は視界がなくても私がロープウェイで上に登るころには晴れているに違いないという、何の根拠もない確信を持ち、私はナイター券を購入した。こうなったらカナダの天気予報と勝負だ。
ロープウェイで山の中腹に登る。ロープウェイの中にはスキーヤーとボーダーが5人ほどいた。なんという心強さだ。お互い会話は無いが、南極越冬隊かエベレスト登山隊のような一体感であふれていた。お互いバカだねえ、と言いたそうなあきれたような目で見ながら。 そう、我々はスキーバカ、ボードバカだったのだ。今ごろ気が付いても治しようがない。
山の中腹は完全なガスで視界は無い。ブーツに履き替えるが、ガスがすごくて遭難しそうだ。これはいかん。やむなく様子を見ることにして、その間は施設を見て回ることにした。ロープウェイ駅はシャレーという施設と一体となっている。このシャレーは夜景を見ながら食事ができるレストラン、展望台があるので、一般の観光客用の設備も多い。バンクーバーの歴史などの資料館もある。
すこし時間をつぶしてからいよいよThe Cut というナイターコースへ。しかしガスは晴れていない。コース脇には巨大な木の彫刻が並んでおり、ちょっとしたパークだが、それが逆に廃墟のようなむなしさを感じさせた。ところが、The Cut の先に晴れ間が見えて、バンクーバーの市が垣間見えるではないか。たのむ、晴れてくれ。ここをゆっくりとすべり降りた。春の雪だが圧雪を毎日していて、今日はスキーヤーが少ないためか、バーンはほとんど荒れていなかった。クワッドでコース沿いを上る。ふと振り向くと、急にガスが晴れだした。おおお、すばらしい!。夢中で写真を撮ったが、夜景ではない。時刻は夜の7時を回っていたが、ここは8時でもまだ明るいのだ。ううむ、なんとか夜まで持ってくれ。
いったん、ブルーベリー・チェアのエリアも滑る。しかし、山頂に向かうリフトは雪不足で閉鎖されていた。このスキー場のロープウェイ駅付近にはクマ牧場やスケートリンクなどがあって、ファミリー対応をしているようだ。
スケート場はスケート靴を履いている子供はいなかった。みんなツルツル滑る長靴をはき、体を支える金属の枠を持ってはしゃぎ回っていた。
いいかげん暗くなってきたので、シャレーにいく。レストラン脇にあるテラスからバンクーバーがきれいだ。街のネオンのひとつひとつが輝き出し、いよいよ空は暗くなってきた。スキー場はどうなっているだろう。8時過ぎにはナイターが終了したので、板を履かずにストックだけ持って、歩いて The Cut のコース上部へ向かった。
おおおおおおお、紛れもないバンクーバーの夜景だ。こんな夜景を見ながら滑ることができるのは、夢のようなことだろう。
バンクーバーはニューヨークのマンハッタンに似ていると思った。細長い島になっており、碁盤目になった道路はエンパイアステートビルから見た夜景を横から見ているようだ。
思えば、バンフ遠征はついていないことが多かった。買ったばかりのサングラスは壊れるし、無傷だった板の裏面に彫刻刀で彫ったような傷が入るし、ストックは先が切れるし、天気は外れまくり、食べ物や飲み物では意表をつかれっぱなしだった。しかし、すべてを許そう。雨の降る中、ほとんどあきらめていながらも、天気予報は外れて晴れるという賭けに出て勝ったのだ。今までのアンラッキーを覆してお釣りが来るほどの幸運だった。
|
|
|
グラウスマウンテンで夜景を見ながら滑るのなら、12〜2月がいい。4月でのこの緯度では8時まで明るくて、リフトが稼動する時間を超えることになる。
|
|
今日のアルバム |
|
|
|
■海が見えるぞ
|
■チャイナタウンの庭園だ
|
■チャイナタウン入り口の
門と町並み |
|
|
|
■チェスをやっていたが、
上手くない |
■宿泊したエンパイア・ランドマーク
|
■ホテルのベランダから(ベラン
ダに出られるのがすごい)
|
|
|
|
■ロープウェイ駅近くの彫刻
|
■山の上はガスっていた
|
■これで登るぞ
|
|
|
|
■ガイドがいたが、「みんな好きだ
ねえ」と聞こえた |
■コヨーテのようだ
|
■これは鷲だ
|
|
|
|
■ロープトウ
|
■労働者の像。
社会主義国のようだ
|
■山のトップはガスっていた |
|
|
|
■ブルーベリー・チェアの
コース |
■クマがいた
|
■よくわからん
|
|
|
|
■開拓者たちのようだ
|
■理解できん |
■スケートリンクは子供に人気だ
|
|
|
|
■天気は思いっきりハズレてくれた
|
■シャレー内にも彫刻が
|
■ホッケーの選手がなぜ?
|
|
|
|
■いい感じだ
|
■バンクーバーに溶け込むようだ
|
■美しい
|
|
■すばらしい
|
|
■一度、思いっきり滑ってみたいものだ
|
|
■The Cut のコース途中
|
|
■バンクーバーの夜景がきれいだ(展望台から)
|
|
|
|