感動の再会 | |||||||||||||||||||||||||||||
2006年レポート(8) 宮城蔵王-1 | |||||||||||||||||||||||||||||
もともと宮城蔵王地区は私が行った事が無いスキー場が固まっている数少ないエリアだ。その中でも「すみかわスノーパーク」は雪上車で樹氷の中を登り、上から滑り降りてくるツアーがあるという、なかなか特異なスキー場まであるのだ。これは行かないわけにはいくまいと思うのは当然であった。ところが樹氷がある地形は吹雪きやすいということでもあり、気圧配置が西高東低の2月はバクチに近い。また巨大になった樹氷を見るなら4月では遅すぎる。というわけで、3月がベストと考えたのが去年の話だ。ところがこともあろうに、その決行日の早朝、私が体験したものとしては人生最大の濃霧が発生し、東北自動車道は手前の首都高速から栃木県に至るまで通行止めとなり、首都高速を途中で降ろされてしまった。この日は関越自動車道も中央道も関東一帯はほぼ通行止めになったので、記憶にある人も多いだろう。 で、今回はそのリベンジとなる。遠征なので2日間のうち1日は蔵王白石と蔵王七ヶ宿(しちかしゅく)にする。遠征ではたいてい近い方を初日にするものであり、この白石・七ヶ宿の方が東京に近いのだが、2日目の天気が崩れそうなので、すみかわを初日にした。電話で聞いたら、今年は雪は多いが暖かくなるのが早く、樹氷が丸まってき始めたというので、グズグズしていられない。 4:56に蓮田SAを出て6:07に西那須野SA、7:08に吾妻PA、7:51に白石ICを出て8:30にすみかわスノーパークに到着した(家から370km)。 |
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すみかわスノーパークのコースガイド(配布パンフレットを加工) すみかわスノーパーク公式サイト |
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ここで注意なのだが、この樹氷ツアーはスキーをやらない一般観光客の方が参加人数が多い。往復は大人で4200円、片道(つまり、スキーヤー)は2,600円だ。当然往復の一般客の方がいいお客さんなので、ちょっとした制限を受けることになる。それは、往復は予約制だが、片道は当日先着順の受付、しかも天候によっては中止もありうるというものだ。そんなわけで、雪上車は11時の出発ではあるが、受付が8時30分からだというので早起きして飛んできたのだ。 なお、このスキーツアーには掟(おきて)がある。入山届けを出すことと、帰る時に下山カードを提出するのを忘れない、ということだ。下山カードの提出を忘れると行方不明と見なされて、捜索隊が出かねないとのことだ。これはスゴイ。自然の中を滑るというより、冒険スキーだな、こりゃあ。今からワクワクドキドキだ。早い時間からの予約スキーヤーは他に数名だけ。とりあえず出発まで一通り滑ってみることにする。 最下部の第1ペアリフトはアイデアとしては面白い。普通はリフト下は滑走禁止だが、幅を広げてリフトすぐ下ではなく、並行してボードパークのコースがある。のんびりペアリフトに乗っていると朝早かった客は居眠りなんかしそうだし、退屈でタバコなんか吸いだすヤカラまで出てくるものだが、ここではジャンプ台がずっと連なっていて、ボーダー(たまにスキーヤー)のジャンプを見て楽しむことができる。ボーダーもモロに見られることを承知しているだけに、なかなかうまいのが多い。 そうこうしているうちに第2ペアリフトへ。ここからは今日滑る刈田岳(かっただけ)や熊野岳が見える。山頂付近では風が舞っていて、視界は良くなさそうだ。 さらに第3ペアリフトに乗る。ここでは山岳スキーの一行(高齢者が多い)がいて、ちょうど山に登るところだった。リュックも大きいし、野営でもするのだろうか。とりあえず私はあとみゲレンデに回りこんだ。ここには超巨大なボーダー用のジャンプ台が2つつながっていて、角度もジャンプ台というより発射台だ。よし、あとで見に来よう。それにしても上の方は朝方でもあるせいか、雪質が大変良い。第2と第1に並行する初心者コースを滑っているとみるみる雪質が悪くなっていく。なんとか上部の樹氷が健在でありますように。 レストハウス前に雪上車が2台、降りてきた。おや、中には観光客がいっぱい。これは、まとまった団体だったので臨時便が出たとのことらしい。いよいよ私も板を預けて乗り込むことにした。 |
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樹氷めぐりツアーの地図(配布パンフレットを加工) 樹氷めぐりツアー公式サイト 夏の「お釜」の写真(宮城県蔵王町観光協会) ※出発点から「こまくさ平」「不帰の滝」経由で登り、 山形・上山(かみのやま)に至る道路が「蔵王エコーライン」 |
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ところで、私にはもうひとつの期待があった。それはこのツアーの最高地点、刈田嶺神社(かったみねじんじゃ)からお釜を見ることだった。お釜とは上の地図右のリンクに詳しいが、きれいなすり鉢の形の火口湖で、夏はエメラルドグリーンの水をたたえる宮城蔵王屈指の観光名所でもある。で、私は中学2年生の夏にそれを見たことがあるのだ。自転車を折りたたんで夜行列車に乗り、早朝に山形県赤湯に着き、上山からこの有料道路を走って蔵王連峰を越えて福島県で宿泊したのだが、そのとき昼食をこの刈田岳のレストハウスでとり、それからお釜を見に行ったのだ。その時の神秘的なグリーンは今でも忘れられないし、たとえ湖面が凍っていようとも、20年以上も前の自分が行った場所に今度は冬に行ってみるのも感慨深いものがあるというものだ。(私が自転車好きだったことは、エッセイの「富士山自転車登頂記」読んでみて) さて、雪上車2台は樹氷原に到着。ここでしばしの観光休憩となる。ヘリコプターの中のようなやかましい車内からひとたび外に出ると、そこには静寂な白銀の・・・じゃなくて、荒涼とした雪景色が広がっていた。「モンスター」の異名を持つ巨大樹氷はあるにはあったが、「えびの尻尾」と呼ばれる長く伸びた氷は丸みがあり、トドマツの緑が見え始めていた。周囲も地面の露出は無いにしても、1回は融けたような雪だ。この樹氷群は蔵王と八甲田にしか無いというが、八甲田にスキーに行ったときの樹氷群は完全に雪と氷で覆われていて12月とは思えないほど実に見事であったのに対して、ここはサナギが脱皮しているみたいでちょっと迫力が無い。それでも暖かくなりはじめた時期に拝めただけでも感謝しなければ。 もっとも、普通の人には全く縁がない自然の造形物であるから、周囲の観光客はもう大喜びで家族連れは結構楽しそうにはしゃいでいた。草津や志賀高原でも山頂近くの狭い限られた場所で樹氷を見たことがあるが、このように山の斜面を覆いつくすようにできた樹氷群は世界でもめずらしいらしい。雪を愛する者は一度は見ておくべきだろう。 さて、そこからさらに5分くらい上に上るとエコーラインからハイラインに入り、いよいよ刈田嶺神社だ。トコロガイカン、すごいガスだ。歩いて1分のところにほとんど雪に埋もれた神社があって、そこから「お釜」を見下ろすことができるはずなのだが、全く見えない。というか、50mくらい先が見えないのだから、話になっていない。しばらく観光客もウダウダしていたがなすすべもなく、結局退散することになった。ううむ残念無念。今日ならまだ天気は持つ、というからせっかく東京からすっ飛んで来たのに。もっともベースは晴天だったから、そのエリアの天気予報など山には全く通用しないのだ。聞くところによると朝イチの団体客はお釜の景色を堪能できたとか。ううむ、この差は何だ。 駐車場に戻り、観光客だけ先に雪上車に乗り込んで下山していった。スキー組みはそれを見送ったあと、板を履いて準備体操。「おおっ、オカマだ!」ガイドの声にはっとして振り返ると、なんとお釜がぽっかりと口を開けているではないか。あのエメラルドグリーンの湖水ではなく、白い雪が湖面を覆っていた。火口は美しい円形で盛り上がっており、色彩は白と黒だけの水墨画のような風景もあってか、自然の造形と思えないほど美しかった。感動の再会だ。 みんなも写真を撮りまくっていたので、しばらく時間を使うことになった。こういうときは贅沢に時間を使おう。 さて、いよいよ下山だ。ガイドは佐藤さんという若いパトロールの人で、なかなか面白くて熱心な人だ。山の話が好きで、私もあれこれ質問する性格なのだが、何でもテキパキ答えてくれた。彼は十代からこの山全体を滑りまくり、すべてを知り尽くしており(3回くらい遭難してそのたびに捜索隊が出て、3回目はおもいっきり殴られたらしい)、「今日はこんな天気と雪だから、こう行くのがベストだ」と言われると全面的に信用したくなるものだ。 ちょっと降りただけで視界はバッチリ(ガスは山頂付近だけだった)、ホコホコの雪を滑り降りる。途中でシールを付けた山岳スキーの人たちとすれ違い、あとは木がまばらに生えた緩斜面を縫うように滑って、ゲレンデトップだ。ツアーはここで終わった。「滑走」という点では味気ないが、リフトでは行けないワイルドな場所に樹氷やお釜観光付で登って滑ってこれたので大満足だ。このスクールではトップシーズンではボーダーも含めて蔵王すみかわならではのキャンプもやったりするので、パウダー派の人は要チェックだ。東京から足を伸ばすだけの価値は十分にあるだろう。 帰りは白石名物の「うーめん」を食べてこけし博物館に寄り、明日に備えて仙台で宿泊した。(牛タンもうまかった) さて、明日は蔵王白石と蔵王七ヶ宿だ。 |
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いい感じのチケット売り場 | 左の建物がセンターハウスで 樹氷ツアーの受付もやる |
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モウタベタ? | こういうのは北米によくある | ||||||||||||||||||||||||||||
第1リフト脇。 ジャンプ台がいくつも続く |
あとみゲレンデを上から。 大きなジャンプ台が2つある |
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巨大ジャンプ台を横から。 立っている人で大きさが分かる |
やけによく整備された初心者 コースだと思ったら、雪上車のコースでした |
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朝イチの団体客が降りてきた | 雪上車の横にスキー板を置く | ||||||||||||||||||||||||||||
超広角で撮影。本当はもっと狭い (あと、車内でオムツ替えるのカンベン) |
樹氷原に到着! | ||||||||||||||||||||||||||||
樹氷は南側から死んでいく | かくれんぼする? | ||||||||||||||||||||||||||||
遠くまで見えるぞ | 神社はほとんど埋まっていた | ||||||||||||||||||||||||||||
この2台で来ました。 背景はガスばかり・・・ |
見え始めたころのお釜 | ||||||||||||||||||||||||||||
幕が上がるようにお釜がはっきりと♪ 白と黒だけの世界だ |
尾根ぞいは滑りやすい | ||||||||||||||||||||||||||||
遠くにえぼし。 あの先に宮城蔵王えぼしスキー場がある |
ほとんど雪が無い斜面 | ||||||||||||||||||||||||||||
前烏帽子(左)と後烏帽子(右) だったと思う |
雪質もちょっとずつ落ちていくが | ||||||||||||||||||||||||||||
振り返って見ると晴れている | お世話になったガイドさん。 おかげさまで楽しかったです! |
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こういう標識、好きだなあ | あとみゲレンデを下から | ||||||||||||||||||||||||||||
観光コースへ行ってみるか | スキー場にしたい斜面だ | ||||||||||||||||||||||||||||
やさしい斜面だ | 両烏帽子の間が大きな鞍部になっている | ||||||||||||||||||||||||||||
な、なんじゃこりゃあ!! オニギリを履いて登っていくぞ!! |
なんと、オニギリはキャタピラで、 頂角がシャフトにつながっているようだ |
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第1リフト脇の目立ちコースの出発点。 「リフト客少ないとやる気おきないね」 |
下の方は初心者コースだ | ||||||||||||||||||||||||||||
広くてなだらかだ | これが白石市の名物、うーめんだ。 そばと比べて味気ないが、胃にやさしいらしい |
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みやぎ蔵王こけし館。 なかなか面白かった |
東の郷土玩具といえば こけしだが、流派があるらしい |
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蔵王から下山するときに遠刈田(とおがった)温泉を通ることになるだろう。ここには日帰りの共同浴場(300円)の壽の湯の他、センターの湯などがあるから、ぜひ立ち寄ってみよう。 | |||||||||||||||||||||||||||||
すみかわスノーパーク(公式サイト) 蔵王のお釜 宮城県蔵王町観光協会 白石うーめん みやぎ蔵王こけし館 遠刈田温泉 |
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