穴場の王者 | |
2013年レポート(3) | |
野麦峠スキー場は強くて安定した斜度が長距離に渡る、すばらしい斜面で知られているが、それ以上に有名だったのは「穴場」ということだ。ファミリー向けの初心者コースが非常に狭く、ファミリーはほとんどいないことや、松本ICからのアクセスの悪さもあって、これだけ卓越した斜面を持っていながらすいているという、会津高畑に似たタイプのスキー場だ。 ところがスキーブームの20年くらい前、スキー雑誌やネットなどで「穴場」スキー場のランキング1位になりまくるや、客がどっと押しかけ、私が行った時は結構な混雑だったのは昔のレポートのとおり。天気は良かったので乗鞍岳や御岳がすばらしく見えたのはいいが、その穴場としての良さを全く享受できなかったという無念さが残っていた。しかし最近は毎年営業継続が懸念されるほどすいているという。さらにまた、スキー場近くの亀遊館という民宿から相互リンクを依頼されたこともあり、こりゃあ是が非でもいってみなくちゃ、ということに相成ったのであった。 野麦峠は3月いっぱいで今季の営業を終了するという。3月30日(土)と31日(日)で乗鞍高原とセットで行くことにした。31日は天気が悪そうだというので、30日は先に野麦峠に行くことにした。 |
|
野麦峠スキー場 |
|||
野麦峠スキー場 (Webを加工) |
昔、バッヂ検定1級を目指していたころは1本目のリフトに乗るために早く到着していたが、今はそういうガツガツしたスキーはしなくなった。早く到着したい理由は最近では、早い時間帯の方が空気が澄んでいて、景色がよく見えるということが大きい。特に春先ともなれば気温の上昇が早く、昼ごろには遠くが霞んでしまうのだ。ううむ、早くリフトに乗らなくちゃ。 リフト券を買うに当たり、実はここでシークレットサービスがあった! 野麦峠スキー場の公式サイトのみで露出していることで、シーズンの最終土日は左の画像にあるとおり1日券が1000円になるのだ。ううむ、シーズンのフィナーレを盛況で飾ろうという涙ぐましい努力ではないか。 リフト券売り場に行って「1日券ください」と言ったら「4000円です」とか言われて、「はあ?」と言ってしまった。 「ええと、40歳以上ですが」 「うちのシニアは60歳以上になります」 「あれ?サイトで『私をノムギに連れてって』というと1000円になるって言ってませんでしたっけ」 「それですね」 いままでシラを切っていたのが白状するように、1000円でリフト券を売ってくれたのであった。付近にはこのキャンペーンに関する露出は何もないので、やはり自分から合言葉を言わなければならないようなので注意だ。 無事にリフト券を手に入れ、とにかく最高地点に急げ! クワッドとペアを乗り継ぎ、最高地点に到着。11時半だったが、ありがたいことに空気は澄んでいて、青空が広がっていた。おお、すばらしい、乗鞍岳がその双耳峰をこちらに見せながら、尾根を広く伸ばし、実にかっこいい。その向こうには白山の連山だ。左側には、御岳が美しい。右側の端には北アルプスが連なり、案内板によれば奥穂高、前穂高まである。槍ヶ岳は惜しくも見えないようだが、乗鞍と御岳をダブルで眼前に見えるのは迫力だ。しばらく見とれて、写真を撮りまくっていた。 さて、1本いきますか。まずはラビットコースを滑る。乗鞍岳を見ながらの迫力のコースだ。そして右に折れてチャンピオンコースへ。すぐに雪がゆるみ始めたが、斜度があるので、滑りやすい。クワッドの降り口がある場所は高速ペアに乗り継ぐ人がゲレンデを横切るので、ちょっと注意だ。パノラマ、立て水の坂まで下りてくると雪がかなりザラメでスピードが出にくいが、トップシーズンならば公式のレースができるくらい、斜度と距離のバランスがいい。なぜここがすいているのか、本当に奇跡だ。 上から下まで滑ったら、あとは雪質のいい上部だけをゴリゴリやるか。リフトに乗ってチラチラ後ろを見ていたら、穂高岳方面の先、尖った先鋒が見えた。槍ヶ岳だ。しっかり見えるし、槍の穂先を見ると、ちょっと得した気分にもなる。スキー場はこういうのも、リフトの支柱とかに注意書きしたりしてアピールしたがいいと思うよ。(後日、実はこれは前穂高岳の間違いであることが読者からの指摘で判明しました。槍ヶ岳はその裏のほうのようです。残念!) 次はエキスパートコースから滑る。こちらは北アルプス方面を見ながらになる。よく見ると笠ヶ岳の先鋒ものぞいている。絵としては、乗鞍岳のツマに添えるには豪華なメンバーだ。景色を見るだけでも来た価値があるというものだ。 さらに次は樹海コースへ。こちらは御岳方面を見ながらになるが、このコース、白く横たわる御岳に向かって一直線なので、浅間山を見ながら滑る表万座のコースにそっくりだ。野麦峠スキー場は、コースの質がいいだけでなく、景色が実にいい。前回来た時も天気は良かったのだが、このサイトで紹介するために再度訪れた意味は十分にあるものだ。 さて、昼食にしましょうか。事前に調べたところによると、ここには山賊焼きという名物料理があるらしい。1200円もするが、「山賊焼定食 “復活ご当地メニュー”」とまで銘打たれていては無視できない。レストハウス樹海でいただくことにした。 出てきたのは、写真にあるような、でかい鶏肉だ。片栗粉をまぶして揚げただけだから、「焼き」ではなく「揚げ」になる。まあ、カップやきそばだってふやかしているだけで焼いていないくらいなのだから、大目にみよう。味は鳥の唐揚げが大きくなったと思えばいい。話によれば鳥を揚げるから「とりあげる」ということで、語感から「取り上げる」に通じるから、強盗焼きでもいいのだが、山賊焼きになったらしい。また、塩尻の山賊という店の山賊みたいな主人が考案し、その豪快に食べる様子から命名されたとか諸説あるようだ。当然古くからあるわけではなく、最近、松本や塩尻あたりのご当地メニューということで売り出しているらしい。そうか、そういうことであったか。管理人はこういうネタは好きなので、消えないようにがんばってもらいたい。 そのあとゲレンデに出たら、気温が上がっていて、下半分はだいぶゆるんできていた。立て水の坂は爽快に滑ろうと努力しても、立て板に水だ。^^; それでも最上部の標高は2,130mと高く、午後でも雪質はよかった。ベースの1,400mまで730mの標高差をコースマップのとおりの直線的なレイアウトで滑ることができるのだから、いかに優秀な斜面であるかがわかるだろう。 予定よりも長く、3時過ぎまで滑っていた。最後まで雄姿を見せてくれた乗鞍岳や御岳に感謝しつつ、名残惜しみながらスキー場を後にした。絶対、潰れてほしくないスキー場の筆頭だ。 さて、付近の名物といえば、とうじそばがあるので、スキー場近くの店に行ってみた。このあたりでは道路にも唐突に「とうじそば発祥の地」と立札が立っていたりするくらいだ。とうじとは「投汁」と書き、小さなおたまくらいの大きさのかごにそばを一握りいれて、つゆや具の入った鍋の中でかごごと温める。それを丼にうつして、つゆをかけて食べるものだ。ただしこのイベント系の作法を実践するには2人前からだというので、1人前のものをたのんだ。前回のへぎそばと同じく、とうじそばとは食べ方の問題なので、どんぶりに全部入ったものが出てきても、中身は同じで、ちょっと面白味に欠けるくらいだが、まあいいだろう。そば自体はとてもおいしかった。 そして富喜の湯という温泉に入り、本日の宿、亀遊館(きゆうかん)へ。ここは昔は山小屋の番人をしていた父親と、京都で仕事をしていたが母親が亡くなったので手伝いに戻ったという孝行娘の二人できりもりしている民宿だ。相互リンクを頼まれた縁で、野麦峠に行く機会があれば泊まろうと思っていたところだ。 とても静かでご飯もおいしいだけではない。1泊2食で6500円という安さと、常連客が多く、おみやげにイチゴ大福を持ってくる常連の看護師さんまでいて、私もいただいてしまった(ごちそうさまでした)。また、猫が多くて、食後はなぜか猫をじゃらしてほんわかと時間を過ごすことができた。とてもくつろげる、いい感じの民宿だ。こりゃあ、常連さんが増えるわけだ。 翌日、雨が強く、乗鞍高原まで車を転がしたが、やみそうになく、結局東京に帰ることにした。初日に野麦峠を滑ったのは正解だった。 ところでこの宿の娘さん、大変きれいな方で料理も上手なのだが、なぜか独身で、相手は募集中だという。ううむ、野麦峠は嫁探しでも穴場であったか! 婚活中の男性諸君、早い者勝ちだ! →亀遊館のサイト |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
松本ICから山道を登り、乗鞍への分岐を 左に折れると野麦街道だ |
これが1,000円のスペシャルリフト券 |
最上部のラビットコース。 乗鞍岳を正面に見ながら。 |
ラビットコース中部から御岳 |
樹海コースは御岳を正面に | チャンピオンコースより乗鞍岳。 斜面がいい |
チャンピオンの最高地点は北アルプスを見ながら | 山賊焼き定食は1200円だ |
アツアツを食べるため、待たされるが、 それなりにおいしい |
レストラン樹海の内部だ |
再びチャンピオンの尾根 | 春スキーはコブができやすい |
乗鞍岳に向かって! | みんな、同じところを滑ると こういうことになる |
ペアを降りたところにショートカットの通路が 作られていて、立札には「野麦峠」とあった |
揚げたチキンでいろいろなバリエーション。 正しくは「ドッグ」だが |
とうじそば、今度食べてみたいなあ | ここが亀遊館だ |
入口には亀の板が。 これをたたいて入るのだ |
御嬢さんが作ってくれた夕食、 とてもおいしかったです |
亀遊館の猫。とてもよく慣れている | たくさんいたぞ |
【ギャラリー】 | |
美しい乗鞍岳。左奥に白山が見える。その手前、低くなっているのが野麦峠の場所 | |
きれいな双耳峰だ。 ずっと見ていると、あの左側の尾根を滑ってみたくなる |
|
御岳を見ながら | |
御岳を望遠で。右端にチャオの一部、右側は開田マイア、 左に御岳ロープウェイ、おんたけは左の向こう側だ |
|
キリマンジャロのようなおとなしい形だが、現役の活火山。 森林限界の線がはっきりしている独立峰であることも美しさだ |
|
ラビットコースのチャンピオンと樹海への分岐にて。 御岳と乗鞍岳が視野に収まる |
|
野麦峠スキー場から見ると双耳峰で、右が剣ヶ峰(3026m:最高峰)、左が大日岳(3014m) 手前にあるのが高天ヶ原(2829m) |
|
民宿の近くに売店があった。民家などほとんどないのに、よくぞやっていたと思い、中に入ってみた。店番のおばさんはどこかのにいちゃんと世間話に夢中で、いらっしゃいませの一言もないのはご愛嬌だ。 店内を見たら、信州みそのドレッシングなんてのがあって、これは珍しい、かあちゃんのお土産になるぞと思って、おやつのポテトチップといっしょに購入した。 代金を支払うとき、おばさんがドレッシングの裏をちょっと見たかと思ったら、いきなり「これ、ただであげるわ」というので、びっくりして、なんてやさしい人なんだ、やっぱり田舎の人は心が温かいな、と感動して、ポテトチップの代金だけ払って店を出たのであった。 ただ、裏を見たのが気になって、調べたら、あれ、賞味期限は1月26日、今日は3月30日だから2カ月過ぎてらあと思って、そこでハタと気づいた。2012年!?1年以上過ぎてんじゃねえか!こんなのを持って帰ったらかあちゃんに怒られるので、捨ててしまった。 翌日、運転中に突然胸騒ぎがして、車を停めてポテトチップを確認したら、ご覧の通りだった。こっちは定価を払っているのだ。商品の期限が切れたものは廃棄されるという、東京のコンビニやスーパーの常識なんぞ、全く通用しないので、くれぐれも油断してはならない。 |
||||||
野麦峠スキー場 山賊焼き 山賊(塩尻) とうじそば 奈川観光協会 民宿「亀遊館」 |
||||||